#柱島つけ麺部 なぜラーメンではなくつけ麺を食べるのか


  ラーメンに比べて、つけ麺の地位は低い。ラーメンが人気なのは否定しないが、つけ麺が正当な理解を得ていないのも事実である。私のような人間にとってはつけ麺がラーメンよりも明らかに、魅力的に映るのである。なぜ、ラーメンではなくつけ麺を食べるのか?


 今日は、つけ麺にまつわる言説を正す形で、その勢いのまま、つけ麺の魅力を紹介し、さらに厳選のおすすめつけ麺屋を紹介していく。ついでに、今年食べたつけ麺の写真も投稿する。





 ラーメン > つけ麺である理由として、よく言われる言説の一つとして、「つけ麺は冷める」というのがある。

 これはもっともであるが、つけ麺通を自称する者としては、一言「経験値が足りない」と言わざるをえない。このレベルの段階でつけ麺に苦手意識を持つのは、一種の食わず嫌いである。この記事が、つけ麺の義務教育となってくれればいいのだが。

 熱々がおいしいのはわかる、そして、ラーメンのほうが冷めにくいのも事実である。
 だが、「冷めてしまう」ということこそに、つけ麺のアドバンテージが隠されているのである。
 
 頭の中でラーメンを作って、そのラーメンを冷まして食べてみてほしい。
 冷ましてぬるめになったラーメンを箸で掴んで口に運ぶ……その時麺は水を吸って伸びに伸びてブヨブヨになっていないだろうか!?
 そう、ラーメンは伸びるのである! 一方、つけ麺は麺とスープを別々にしているから水を吸って伸びることがない……つまり、つけ麺は長い時間をかけて食べるためのメニューなのである! サンドイッチを買って、「なんだこの料理は!? すぐ食べ終えてしまって食べた気がしないぞ!」と言う人はいないはずである。そして、つけ麺の多くは冷めてもおいしいようにできている。

 つけ麺の本質は、長く楽しむことなのである。麺の量が多いのも、腹を一杯にするためだけではなく、長く楽しめるようにでもあるのだ。
 では、ぬるくなってしまうほど長い時間をかけて何をしようというのか?




 まず第一に、変化していく温度を堪能するというのがある。
 料理に温度は大事な要素である。温度が数度異なるだけで、味わいは大きく変わる。ぜひ、熱盛を注文して、その熱盛が冷めていく間の味わいの繊細な変化を感じてほしい。

 第二に、つけ麺のスープの味わいを分析してほしい。
 ラーメンとつけ麺の違いとして、大きいのはスープの濃さであろう。でも、実はスープの濃さはつけ麺の本質ではない。つけ麺の本質は……味の複雑さなのである。

 つけ麺のスープは味が濃いから、素材の味が強く出る。ラーメンではこうはいかない。そして、おいしいつけ麺というのは何種類ものダシと具材を入れているのである。ここで何が起こるか? 旨みや甘みや辛みや酸味やが入り混じった、複雑な味わいになるのである! しかし、そのような複雑な味を、水で薄めて出されても、我々は理解できない。なんとなく、1〜2種類くらいの味がわかるくらいだろう。味を理解するためには、味を濃くするしかない。
 このために、つけ麺はスープを濃くして味わいを"直"で出しているのだ。

 この味わいは何なのか?この味のハーモニーは何なのか? 何かの味がまだ隠れているのか!?
 もうおわかりであろう、つけ麺はパズルなのである。




 ここで、「つけ麺は飽きる」という言説に反論ができる。
 飽きるのは味が"弱い"つけ麺の場合で、味が複雑でないためにすぐ底が見えてしまうからなのだ。味が複雑ならばずっと食べ続けることができる。複雑な味が微妙な化学変化で揺れ動く様を永遠に堪能していられる。複数の旨味がぶつかりあったり、甘みのなかに旨みが存在したり……そうそう、味が濃くなることで、スープはチャーシューやメンマと単体で戦える戦士となるのも忘れてはいけない。薬味やチャーシューとスープがぶつかり合う様もまた楽しめるのだ! 本当においしいつけ麺は、麺を平らげた後残ったスープを割らずにそのまま飲めるようになる。味わいを"解き明かした"喜びとともに飲み干すスープはまさに聖杯である。(※特別な訓練を受けています。真似は自己責任でお願いします。)

 本当においしいつけ麺は、味が安定しないことすらある。その微妙な味わいはまさに芸術品で、日によって微妙に味が変わるので、悪戦苦闘していた店主を知っている。(今はだいぶ安定したようだ)
 



 加えて、麺のモチモチ感も、つけ麺の魅力の一つとして当然あげられるだろう。
 太めの麺の噛みごたえは確かな食べごたえを与えてくれるだけでなく、スープの味わいがそのうえで広がるバトルフィールドになる。噛んでいて楽しいという感覚もまた、ラーメンより大きい。円柱状でないことで、スープがよく絡み、また絡み方にムラができることで、味わいも変わるのである。麺そのものの小麦の味わいも、当然ラーメンより強く出る。ラーメンの麺が小川のせせらぎなら、つけ麺は全てを飲み込み進む濁流、食欲のダムは決壊寸前である。




 ここまで、つけ麺のおいしさを滔々と説明してきたが、その複数で高度な味わいから、いわゆる「ハズレ」も多いのも事実であることも認識できたであろう。通になると、新規開拓してハズレを引くことすら楽しむのだが……これはさすがに頭がよくない。
 では、本当においしいつけ麺はどうやって探せばよいのだろうか?  グルメサイトの口コミは重要だが、他にもいくつかある。
 まず、麺の量が多すぎるつけ麺屋はやめたほうがいい。つけ麺界にも"二郎系"のような風潮はあって、量でおしてくる店がある。ラーメンという媒体なら二郎系は平気でも、味わいが強く出るつけ麺で、量至上・味二の次のつけ麺を食べると、結構きつい。量がたくさん注文できすぎるつけ麺屋はよすのが無難である。
 また、つけ麺のスープよりもチャーシューなど付け合わせを前面に出しているのも危ない。スープの重要性はよくわかって頂けたと思うが、それが二の次になっている可能性があるからだ。
 それと、ラーメンを中心に提供する店の出すつけ麺も、黄色信号であることが多い。味が薄かったり、麺がラーメンとあんまり変わらないことがあり、つけ麺を頼む意義が薄いからだ。しかし、これは店にもよるので、前2つよりは心配しなくていい。

 逆に、グルメサイトを見て、スープに3種類以上の味付けがひそんでいることが確認できれば、結構当たりであることも多い。




 最後に、自信を持っておすすめできる店を3つ紹介したい。


舎鈴(御茶ノ水など)



初心者向:★★★★★
行きやすさ:★★★★★
魚介:★★★★★
店内の謎和風BGM:★★

有名な魚介系つけ麺。ただの魚介だけでなく、豚や鶏の出汁も重ねており、味は濃くて複雑、しかしあっさり目で食べやすいため、つけ麺初心者にもおすすめできる逸品。女性にも人気らしい。都内に店がいくつもあるのも、嬉しい。


裏サブロン(三河島)




甘み:★★★★★★
旨み:★★★★★
インパクト:★★★★★
行きやすさ:★★

驚きの"甘い"つけ麺。現役パティシエおじさんの作るスープはまるでスイーツのよう。しかし、単に甘いだけではなく、旨みもしっかりあり、甘みから旨みを発見するのが楽しい。付け合わせもおいしい。スープはつけ麺好きなら喜ばずにはいられない粘度の高さで麺によく絡む。デザートにケーキを注文することもできる。「つけ麺」と「もりそば」という2種のメニューがあり、両方ともつけ麺なのだが、もりそばのほうが甘みが強い。甘いのが心配という人はつけ麺でどうぞ。
営業時間が特殊かつ、人気店で、広報もあまりしていないので、今日は休みだったとか、もう終わりだった、みたいなことがありえるので、よく下調べをして行くべし。



結心(自由が丘)



甘み:★★★★★
旨み:★★★★★★
水がおいしい:★★★★★
香味野菜が一瞬雑草に見える:★★

旨みと甘みがせめぎ合う2皿。スープを少し食べるだけでかなりの味付けがされていて複雑な味わいであることがわかる。そのわりに、味の本筋はシンプルで、スープもあっさりめなので食べやすい。というか、食べやすくなければ窒息死してしまうのではないかと思うくらいおいしくて箸が止まらない。スープだけでもこんなにおいしいのに、付け合せのチャーシュー(スープの下に隠れている)や、香味野菜(麺の上に乗っているやつ)と一緒に食べると、味が大きく変わってこれまたおいしい! 麺もモチモチで満足。自分の中での今年の優勝者はここですね。


◆◆◆◆◆


いかがでしたか? 残念ながらつけ麺の年収はわかりませんでしたが…… 
つけ麺の奥深さが分かっていただけたと思います。
本当につけ麺を見つけたときの何にも代えがたい喜び、それを感じるために、みなさんもぜひつけ麺に挑戦してみてください! 
そして、最高に美味しいつけ麺を見つけたら、ぜひfediverseで #柱島つけ麺部 あるいは #gochisou_photo で店名を添えて紹介してください! 一緒に楽しいつけ麺lifeを!


最後に、アドベントカレンダーを企画してくださったgochisou_photoさん、aquarlaさんに感謝を申し上げて、乱文を締めくくりたいと思います。ありがとうございます。
明日の方が何を投稿されるのか楽しみですね。それでは、またどこかで。
https://adventar.org/calendars/5016







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