『正義論』と自尊 自己肯定感が持てない若者と不正義
bookwor.msさんのAdvent Calenderにお邪魔させてもらいながら、現在進行形で遅刻しております、申し訳ありません…… 本の紹介ということで、私は今年一番読んだ本である『正義論』を紹介したいと思います! 紹介といっても、大海のようなこの一冊を、短い紙幅で(そして、いくら長い紙幅を割いたとしても)航海しきるのは無理なので、その中のほんの少しをちょっぴりと説明することにします。 目次 『正義論』とは? 正義の二原理と偶然性 正義の二原理と「協働」、安定した社会 正義と自尊、自己肯定感 ←自己肯定感の話だけ見たいならここだけでおk 『正義論』とは? 現代政治学最高の名著、それが『正義論』です。 経済学とそれに基づく功利主義が台頭し、政治学は対抗する理論を打ち立てられずに煮詰まり、”Does Political Theory still Exist?”(政治理論はまだ存在しているのか?)と言われていた20世紀後半、政治学を再興したのが『正義論』。現在の政治学のほとんどの学者がロールズの影響を受けている様は「ロールズ・ファクトリー」なんて言われ(揶揄?)もしています。 正義の二原理と偶然性 正義論は長く複雑な文章ですが、根本を流れるテーマは功利主義への批判と「正義の二原理」の理論立てです。正義の二原理とは、だいたい簡単に言うと 第1原理:基本的人権は他者の基本的人権とぶつかるときを除き不可侵である 第2原理:不平等は、その不平等である状態が、社会において最も恵まれない境遇にある者に便益をもたらす場合のみ許容される というものです。 要は、不平等は基本だめだよ、でも、最低の境遇の人を助けるための不平等ならいいよ、ということです。 具体例でいえば、医者が給料を多くもらうのは、医者にインセンティブを与えて、より病気の人を助けられるならいいよ、ということですね。逆に、いくら人の命を救う医者でも、めちゃくちゃお金をもらって庶民とあまりにも所得格差が開いたら、それは不正義だということです。 ロールズがこの原理を導き出した背景には、 全ての人間にはあらゆる偶然によって落ちぶれる危険がある という事実があります。 我々はいま少なくとも「まし」な生活をしているでしょう。しかし、一方で、偶然、何かの事故が起きて大きな障害を負ったり、あるいは、偶然